人びとと一緒に店へ、前方に何が見えるか?窓。
なかには何があるのか?商品。
それとも看板?それとも商品と看板?よく見えない。
日光がガラスに反射している。
あるいは外が暗いのに照明を落としすぎだ。
たいていの小売業者は、昼と夜とで照明を変えるということをしない。
つまり、昼と夜の(両方でなければ)どちらかは、視界がひどく悪いということだ。
話を先へ進めるために、窓のなかに何があるかがわかったとしよう。
何かのディスプレイ、マネキンか商品だ。
だが、それがなんであるにせよ、スケールを間違えている。
あんなに遠くにこまごましたものを並べてもここからはよく見えない。
それに覚えておくべきだが、人は速く歩いているときほど視野が狭くなる。
だが、品物や宣材を見たり読んだりできるくらい近づいたときは、足を止めて眺めようという気分ではない。
心臓破りの駐車場歩きを終えて、ようやく入口が目の前にある。
ウィンドウの狙いがなんであれ、そんなものは忘れることだ。
駐車場に面したウィンドウのメッセージは、大きく、太く、短く、シンプルに。
でなければただ邪魔なだけだ。
さあ、ドアの前まできた。
なかに入る。
勢いにのってさらに進む。
店の敷居をまたいだとたんに急停止する人を見たことがあるだろうか。
私はない。
玉突き衝突の原因だ。
ここにきて、一緒に立ってドアを見よう。
客が入ってくると、何が起こるか?見えないかもしれないが、彼らはあわただしく自分を適応させようとしている。
ペースをゆるめると同時に、目を明るさとスケールの変化に調節し、首を伸ばし、見るべきものをすべて見てとろうとするのだ。
その一方で、彼らの耳と鼻と末梢神経が、それ以外の刺激を識別している。
音やにおいを分析し、店内が暑いか寒いかを判断する。
このような多くのことが行なわれるのだ。
つまり、まず断言できるが、彼らはまだ本当に店内にいるのではない。
見たところいるにはいるが、あと何秒かしなければ本当に店にいる状態にはならない。
じっくりと観察すれば、買い物客の大半がどこで歩をゆるめ、どこで外にいる状態から店のなかにいる状態への移行をはたすかが予測できるだろう。
誰でもほとんど同じ場所だ。
店のフロント部のレイアウトにもよるけれども。
ショッピングの始まりつまり、この移行がなされる前に客が通るゾーンに何を置いても役に立たない可能性が高い。
商品がディスプレイしてあっても、客は目もくれない。
掲示があっても、さっさと通り過ぎるだけなので、何が書いてあるか読みとれない。
販売員が心をこめて「何をお探しですか?」と言おうものなら、「いや、別に」と答えるだろう、間違いなく。
チラシの山や買い物カゴをドアのすぐ内側に置いてみるといい。
客はせいぜい見るだけ、まず手に取りはしない。
店の奥に10フィート移動すれば、チラシもカゴもすぐになくなる。
これは自然の法則、つまり買い物客には滑走路が必要だということだ。
われわれのクライアントに話をすると、意義深く役に立つわれわれの発見のなかでもとりわけ移行ゾーンへの反応が強い。
われわれが知らせることのなかで、おそらくもっとも意外なのだろう。
たぶん、われわれの助言が、フロントにたいする人間の根強い憧れをそっけなく退けるからだ。
われわれはみなそこへ行きたがる。
集団の最前線、列の先頭、クラスのトップ。
フロントランナーには戦利品、しかし、ショッピング環境においては、最前線はときに人がもっとも行きたがらない場所なのだ。
たとえば、小売業者はフロント。
ドアに商品名を掲示してメーカーから金を取ることがある。
一見したところ、誰もがフロント・ドアを見るわけだから、これはマーケティング予算の賢い使い方のように見える。
ところが、買い物客がドアに近づくときは、ドアのハンドルや、押す/引くの表示を見ているものだ。
私はいまだかつて買い物客が足を止めてドアに書いてある文字を読むところを見たことがない。
人が立ち止まって読む場合は一つしかない。
店が閉まっているときだ。
マーケティングシールの水準からすれば、これも何かの役に立つのかもしれない。
だが、たいした役には立たない。
現在、多くの店に自動ドアがある。
客にとっては便利な装置だ。
とくに荷物を持ったりベビーカーを押したりしている人には。
だが、入店が容易だというのは、移行ゾーンの拡大につながる。
速度をゆるめさせるものがないからだ。
とくに小さい店では、入口に敷居のようなものを設けたほうが、何もしないよりは利益が大きい。
ほんのおしるし程度でいい。
わずかにきしるドアやがたつく蝶番も有効だろう。
ドアウェイの特殊な照明も、外と内をはっきりと区別するのに役立つ。
大きな店では、フロントのスペースを無駄にする余裕が多少ある。
一方、小さい店にはない。
いずれにせよ、移行ゾーンを考えるにあたっては、二つの指針がある。
入口と移行ゾーンについてなすべきで「ない」ことについてのすぐれた教訓は、洗練された大企業Bの事例だろう。80年代の初めに、Bは新たにサラダバーの導入を検討していた。
鳴りもの入りで紹介しようと、実験的にレストランの出入り口を変更した。
従来、駐車場にもっとも近いドアが入口だったのだが、入口を出口に変更し、その隣の大きな窓ぎわにサラダバーを設置した。
客が車をおりていつもの入口に歩いてくるとサラダバーが目に入り、食欲をそそられた客は、入ってくるなり、もちろん新しい入口からだが、レタスを取りにいくという寸法である。ところが、実際はちがった。
客は昔の入口の前にくると、ハンドルを探す。
ところが工事のときに撤去されている。
彼らはそれから後ずさりして、気まずそうに頭をかき、店に入る方法を探しはじめる。
サラダバーには目もくれない。
ドアを探すのに忙しかったのだ!ようやくドアを見つけると、空腹にいらだちが加わって、さっさとカウンターを見つけ、いつものハンバーガーとポテトフライだけを注文した。
こんな調子では、サラダバーが利用されるチャンスは万に一つもない。
あるスポーツ用品店の事例移行ゾーンに関するろくでもないアイデアをもう一つ。
あるスポーツ用品店の経営者は、客が入ってきたら5秒以内に挨拶せよと全従業員に指示した。
結果はどうなったか。
客は店に足を踏み入れたとたん、入口のそばにずらりと居並び、心のこもったいらっしゃいませを浴びせようと、まるで獲物に飛びかかろうとするワシのように待ちかまえた店員たちと鉢合わせしなければならないのだ。
つい2、3年前にも、移行ゾーンの間違った使用例を見かけた。
KマートのためにIの子会社が設計した対話式コンピュータ情報機器をテストしていたときのことだ。
タッチスクリーンとキーボードを備え、たとえば男性用下着はどこかとたずねれば、店内の地図に加えてTシャツや靴下のクーポン券をくれる。
結構なアイデアであり、うまく実現されていた。
客は助かり、店側は案内デスクに店員を立たせて、客に男児用セーターはこちらですと1日に72回も説明させるためのコストを省くことができる。
ところが、店の幹部はまもなく、ちょっとした不具合に気づいた。
機械を利用する客がほとんどいないのだ。
問題は、誰もが店のなかに6歩入ったところでは、自分の行き先がわからないとは思わないことだった。
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